「編集者という病い」 by 見城 徹

「顰蹙は金を出してでも買え!」「薄氷を薄くして踏み抜け」など過激なスローガンを掲げ、角川春樹前社長の逮捕をきっかけとして角川書店を辞め、幻冬社という出版社を立ち上げ、五木寛之「大河の一滴」「人生の目的」、石原慎太郎「弟」「老いてこそ人生」、唐沢寿明「ふたり」、郷ひろみ「ダディ」、天童荒太「永遠の仔」、梁石日「血と骨」、向山貴彦「ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本」、村上龍「13歳のハローワーク」、上大岡トメ「キッパリ!」、木藤亜也「1リットルの涙」、山田宗樹「嫌われ松子の一生」、劇団ひとり「陰日向に咲く」の14作のミリオンセラーを送り出したカリスマ編集者、見城徹の編集者としての人生が綴られている本です。

ぶっちゃけ知らない人だったのですが、何年か前に人に薦められて買ったのが積ん読状態になっていたのを発見して読んでみました。

そしたらなんと!面白いじゃーないですか!

不況下にある出版界において、「売れない原因は、メディアの多様化による活字離れ」という通説を否定し、「要はどれだけ読者の胸にしみこむか。漱石がなぜ読みつがれてきたか。おもしろいからです。おもしろいという視点が出版社から抜け落ちた瞬間に、活字は硬直化するのです。」と言う見城氏。「僕はつねづね、売れるコンテンツは四つの要素を備えている、その必要条件を満たすものは必ずヒットすると思っています。1オリジナリティがあること。2明解であること。’3極端であること。4癒着があること。」とも語ってしまっています。

文芸だけでなく、音楽家、演劇系などの幅広いジャンルの人たちとの交友とその結果表現してもらったものについて、付き合い開始の秘話やら、文章を書いてもらうまでの口説き方などなどが書かれていた。ご本人もすべての人に対応できるノウハウなどなく、それぞれの人に合った方法が存在するっておっしゃられているように、それぞれに独特の交友があって面白かった。

特に興味深かったのは尾崎豊と中上健次かなー。特に尾崎との交友はもっとも大量に書かれていて、逮捕される前に「誰かのクラクション」を書いてもらうまでの話と、逮捕された後に、「誕生ーBIRTHー」をリリースして再起するまでを全ての面で援助した話が書かれている。後者のものが特に壮絶で、著者自身も死ぬことを考えるほどだったという。。。

あとは郷ひろみの「ダディ」の話もあざといとも言えそうだが、書かせるまでに至る過程は面白いと思った。

ソースが重複しているらしくて文章がダブってる箇所があるのはちょっとくどくなってしまってますが、著者の生き様を体現するかのように濃厚な迫力で迫ってくる文章は読みごたえがありました。

解説で小池真理子さんが「すべてにおいて、見城氏は「過剰な」男である。自意識のありようも、自己嫌悪の度合いも、優越感も劣等感も、何もかもが過剰で、本人ですら、その過剰さにうんざりしながら生きている、という印象がある。」と書かれているのがもっとも適切な評価なんでしょうね。

一番印象に残った話は、編集者として必要な資質は何かという話の中で挙げられたものとして、「本でも映画でも何でもいいから自分が感動したものを「とにかく読め。とにかく観にいけ。とにかく聴け」と、みんなにいえること。それは独断的でも、ほかの人が観て、「なんだ」といわれてもいい」という話。

これはいろんな表現者に当てはまる話だなと思いました。


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